
規格外の樽だけでないKomakiだけのウイスキー
小牧ウイスキーの特徴は、その樽だけではない。
ウイスキーの発酵にも本格焼酎、そして小牧氏の知見が大いに生かされている。
「本格焼酎は、麹を使った並行複発酵が主体となるのですが、ウイスキーは麦芽のもろみを使った単行複発酵です。このもろみ発酵において本格焼酎の知見を大いに参考にし、製造機器のすべてを自分で組み込むことにしました。通常では製造ラインの機器を1社のウイスキー設備業社にお願いするところを、ミル(麦芽粉砕器)から、マッシュタン(麦芽糖化槽)送液ライン、冷却器、ボイラーなどすべてを個別発注し、オリジナリティある酒質にこだわりました。2基のポットスチル(銅釜蒸留器)にいたっては自分で設計したオリジナル蒸留器になっており、日本酒の生酛造りで有名な新政酒造の木桶の発酵槽も2基取り入れるなど面白い試みとなっています」(小牧氏)。
製造工程、熟成樽、そのすべてにおいて日本ならではのオリジナリティにあふれ、世界初の試みがなされているKomakiウイスキー。
気になるのは、その味わいだ。
「蔵でもまだ僕しかテイスティングしておりませんが熟成を重ねて、やっと上立ち香と味がリンクしてきたように思います。メイプルシロップのような甘い香りの奥にアニスのような清涼な香味があります。まだ誰も経験したことのない香味になることは間違いないですね。樽の熟成に個体差があるのでファーストロットの出荷時期をまだ明確にできないのですが、2025年末から2026年の春までには、と考えています」(小牧氏)。
このような小牧醸造の新しい試みやこれまでの歴史にとらわれない精神はウイスキーだけでなく、伝統の本格焼酎にも反映されている。
「本格焼酎では宝酒造と共同で製造した、芋と芋麹のみを使用した本格焼酎『一刻者』などこれまでになかった取り組みをしてきました。昨年には新しい試みとして、蒸留器内部を真空にし、減圧することでアルコールの沸点を下げ、香味の高い成分をより抽出することができる減圧蒸留器を導入しました。この蒸留器を使い本格焼酎の新しい価値をご提供したいと考え、新商品を開発中です」(小牧氏)。
そして、小牧氏は冒頭にあったような鹿児島の気質と、日本ならではの酒造文化を多くの人に触れ合ってほしいという願いを、さらに一歩進めようとしている。
「鹿児島は、日本で1番本格焼酎メーカーが多い県で有名ですが、気づくと、ジャパニーズウイスキーの蔵数でも一番多い県となりました。すでに蔵周りツーリズムをされているメーカーもあります。今年は弊社も蒸溜所見学の受け入れ体制を整える方向で進めています。鹿児島の蒸溜所巡りをきっかけに鹿児島を好きになっていただけたら嬉しく思います」(小牧氏)。
いま、日本ならではの新しい酒造文化が生まれようとしている。