
日本が誇る 新たなウイスキーの挑戦
九州、鹿児島。
日本を代表する焼酎の産地から世界初のウイスキーが生まれようとしている。
その名はKomakiウイスキー。
大地と水が織りなす酒蔵で世界唯一のウイスキーが胎動
焼酎の名産地である鹿児島。
その地に1909年(明治42年)創業以来、世界的な焼酎を生み出している小牧醸造という会社がある。
初代小牧伊勢吉が自然豊かなさつま町に蔵を構え、伝統の和甕仕込みにて焼酎づくりを始めたことから歴史は始まるが、蔵のすぐそばを流れる川内川がたびたび氾濫。
蔵が流され、大事に育てた焼酒や大切な酒造りの道具を失ってしまうことが3度もあったという。
「そういった困難がいつの時代に起こっても、折れず挫けずひとつ先にある世界を目指して前進し、再建を重ねてきた歴史があります」と、現在の当主、3代目小牧伊勢吉氏は言う。
事実、近年では2006年の鹿児島県北部豪雨災害により、水位4メートルもの浸水被害を受け、蔵が水没。
仕込んでいた焼酎だけでなく、機械や書類などが喪失してしまった。
だが、酒販店や業務店、ボランティアの有志の協力により2ヶ月で焼酎製造を再開できたことは、小牧醸造の歴史と精神、なにより長く小牧醸造があらゆる人々に愛されてきた証でもあるだろう。
その後も国内外で多くの賞を受賞する焼酎を送り出してきた小牧醸造が2023年、新たな事業を開始した。
それがウイスキーの製造だ。
ご存知の通り、ジャパニーズウイスキーは世界五大ウイスキーに数えられるほど成長し、その品質や味わいは海外から垂涎の的。
日本各地に独自の蒸留所があるなかで、小牧醸造はなぜウイスキー作りを始めたのだろうか。
「さつま町は、南国である鹿児島の中でも盆地であることから、夏はより暑く冬は降雪にも見舞われる土地です。つまり、寒暖差が大きいためウイスキーの熟成が早く、ウイスキー作りに適した土地であるともいえます。その環境を利用し、酒質は香り高くフルーティな味わいのウイスキーを作れると思い、目指すことにしました。」(小牧氏)。
さらに、鹿児島という地域性も、ウイスキー製造という新規事業へのきっかけになったという。
「鹿児島という土地は昔から外の世界に積極的に目を向けるグローバルな感覚にあふれています。コロナ禍のパンデミックによって弊社の酒造りも一度は低迷しましたが、その苦境を乗り越えたいまこそ、私たちが培った日本固有の本格焼酎文化をウイスキーという世界の共通言語に形を変え、より多くの人に触れてほしいと考えて、新しいものにチャレンジする好機だと感じたんです」(小牧氏)。
まさに長年どんな困難にも耐え続け、実直に鹿児島という地で焼酎を作りつづけたからこそたどり着いた新たな答え。
だが、ただウイスキーを作るのではなく、これまでにないウイスキーを作ろうとする試みには大きな困難が待ち受けていた。