老化とミトコンドリアの関係

老化とミトコンドリアの関係

前号、辻先生への取材でお伝えしたとおり、人の老化は30歳を境に始まると言われている。

その初期症状は「疲れが残る」「疲労が回復しない」といった“疲労感”。

はたして“疲労感”の正体とはー? 
私たちの身体に起きているエネルギーの新陳代謝に迫る。

人が生きるエネルギー その発電所

「疲労感というのはエネルギーを作れなくなっているということなんです」と辻先生は語る。

人は糖と脂肪からエネルギーを作るが、それが作れなくなるとはどういったことなのだろうか。
「細胞の中にあるミトコンドリアでエネルギーを作っています。糖と脂肪は炭素、酸素、水素でできていますが、ミトコンドリアは糖と脂肪から取り出した水素(電子)と呼吸で得た酸素を使ってエネルギーを作り上げているんです」(辻先生)。

ミトコンドリアはすべての真核細胞の中にある細胞小器官で、1個の細胞に数百個から多い場合は2,000個程度含まれている小器官。細胞の生存・働きにはエネルギーが不可欠であるため、ミトコンドリアはとても重要な役割を担っており、いわゆる人体の発電所とも言えるだろう。

「老化の大きな原因として身体のエネルギーが足りなくなっていくことがわかっています。人間の最小単位は細胞。その中のミトコ ンドリアがエネルギーを生み出している。つまり、身体の機能が低下するということはミトコンドリアの機能が低下している。古くなったミトコンドリアがエネルギーを作れなくなるんです」(辻先生)。

しかも、エネルギーを作れなくなるだけでなく、細胞自体を傷つけることもあるという。ミトコンドリアはエネルギーを生み出すときに、同時に活性酸素を作り出す。

この活性酸素が細胞にダメ ージを与えてしまうのだ。細胞、そしてミトコンドリア自体は古くなったものから新しいものへと新陳代謝がおこなわれる。

だが、老化によって新陳代謝ができなくなり、エネルギーは生み出せなくなると、活性酸素を過剰生産し続けるミトコンドリアが居続けてしまう事態が引き起こされる。

「ミトコンドリアによって生命を維持する爆発的なエネルギーを得ると同時にそれを生み出した廃棄物が生まれるということでもあるんです。もちろん、エネルギー効率を上げて活性酸素を減らすことを目指して研究がおこなわれていますが、現実世界の発電所や自動車もそうであるようにゼロにするのは難しい」(辻先生)。

では、少しでもミトコンドリアの老化を防ぎ、新陳代謝を促すにはどうすればいいのだろうか?

ひとつには運動をすることで新陳代謝が促されるという。

また、ビタミンB群はミトコンドリアのためといってもいいほど、効果が期待できる。

だが、実際には、そう簡単な話ではない。「運動をするか、ビタミンをとるかなのかが大事なのではありません。

 

ミトコンドリアや細胞は指示を得て、栄養を取り、エネルギーを作り出します。そのどれも欠けたら正しく機能しなくなる。正しく機能するミトコンドリアがどれだけいるのかという、質の問題になるのです」(辻先生)。ミトコンドリアの老化によって、正しい機能を果たすための「栄養」「エネルギー」「命令」のどれが足りなくなるのか、その量も人それぞれとなるため、辻クリニックでは診察の際にはひとりづつチェックして適切に対処をおこなっていくという。

現在、ミトコンドリアと老化の因果関係において、さらなる多角的な研究や解析がおこなわれている。

これからのアンチエイジング、そして医療のことだけでなく、ひとりひとりが、よりQOLの高い生活を送るために、自身の身体を細胞レベルから知っておくことが大事になるだろう。

 

老化とミトコンドリアの関係性は今後もしっかりと伝えていきたい。

■辻クリニック 辻直樹院長
医療法人社団医献会理事長、辻クリニック院長。1965年生まれ。獨協医科大学医学部卒。スポーツ選手の栄養・ホルモン・運動生理学に携わる一方で、エイジングをコントロールするための総合医療について独自に研究を積み重ねてきた。

辻クリニック東京 ADVANCED AGINGL ABORATORY

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