パリの歴史的建築がホテルに再生 そのレストランが瞬く間にミシュラン三つ星を獲得

パリの歴史的建築がホテルに再生 そのレストランが瞬く間にミシュラン三つ星を獲得

パリの老舗百貨店、ラ・サマリテーヌの建物が大改装され、2021年秋にホテルとしての新たなメゾン、シュヴァル・ブランパリが開業。

詳しい経緯は後述するが、ここではメインダイニング「プレニチュード」をフォーカスしたい。

開業からたった6ヶ月でミシュランの三つ星を獲得し、大きな話題に。

快挙を成し遂げたシェフはアルノー・ドンケル。

2013年、南仏サン・トロペの「ラ・ヴァーグ・ドール」にて、35歳という若さで三つ星を得た俊英である。

プレニチュードで彼が挑むのは、美食の都パリで、フレンチを世界最高の料理たらしめるソースの創造だ。

抽出液や果汁を合わせ、何重層にも仕上げるソースは、昔から料理人の技術と感性に委ねられてきた。

“調香師”とも称されるドンケルは、メロディを奏でるように“味の旋律”を操り、ソースに象徴的な命名をする。

例えば「ショパン・カーミン」。

海老とカツオのコンソメをベースに、ローズマリーやヴィネガー、胡椒を重ね、香りの調和を施した紅色のブルーテソースで、ガンボンという海老に添える。

一方「D’Y」は、鶏にシャトー・ディケムの香りのソースをまとわせる。

サフランの風味を加えたブイヨンに、貴腐ワイン、柑橘、ハーブ、カメルーン産ペンジャペッパーなどを加え、官能的な天上の香りへと導く。

彼にとってソースは、香水のように料理にまとわす芸術なのだと気づかされる。

つかう食材はすべてフランス産。

器はパリ郊外の陶芸工房による特注品。

さらにカトラリーはクリストフルと、細部にまでフランスのクラフツマンシップにこだわる。

そしてデザートはパリで最も注目されるパティシエの一人、マキシム・フレデリックが担当。

軽やかで詩的なデザートであり、ドンケルのクリエーションと調和する。 

“プレニチュード”とは「至高」「完全性」を意味するフランス語。

その名の通り、五感で味わう食芸術の極みが体験できる。