日本人建築家が生んだ 有機体のような歌劇場

日本人建築家が生んだ 有機体のような歌劇場

台湾建築逍遥の締めくくりは台中にある不思議なデザインのオペラハウスへ。「臺中國家歌劇院」は再開発地区のランドマークといえる歌劇場である。設計を担ったのは、日本が世界に誇るプリツカー賞受賞建築家の伊東豊雄。建物は建造工程があまりに難しく、6年もの歳月をかけて造られた。「世界で最も難しい建築」のひとつにも挙げられ、工事の経過がテレビ番組で世界に放送されたほどだ。

建造が困難だった理由は、外装内装ともに3次元の曲面が複雑に連続している「カテノイド」と呼ばれる構造体にあった。設計のコンセプトは「音の洞窟」。心の音を聴くという意味合いが込められており、自然界との繋がりを持つ生物のような建築を目指したという。

外観はワインボトルをモチーフとしており、ほとんどがガラス窓になるが上写真の部分は白い曲面壁になっている。外からの空洞は内部に向かっており、その内側に有機体のような内装が現れる。館内には柱も梁もない。床が滑らかにせり上がり、そのままカーブを描いて天井と一体化。部屋と部屋の仕切りも曖昧で確固とした境界はなく、空間は緩やかに枝分かれして伸びていく。まさしく動物の体内を彷彿とさせるデザインだ。しかしそこには決してダークな印象はなく、白が基調で開放感がある。1階の床下には冷水が流れて、心地よい自然の冷気が館内に漂っている。

実は「臺中國家歌劇院」は紆余曲折を経て開館にこぎつけた。この国家的なオペラハウスの建築計画は1990年代に遡るが、2002年、グッケンハイム美術館の台中誘致計画が起こり、歌劇院は候補地を移動させられた。ところが財政難からグッケンハイムの計画は頓挫し、歌劇院も台中市の地方施設に格下げ。そしてコンペで伊東豊雄の作品が選ばれた。完成迫る2014年、歌劇院は再び、国家事業に昇格し晴れて開館。ところが今度は施工不良が発覚して閉館。ようやく2016年に再出発を迎えた。

今日は屋上庭園が市民の憩いの場ともなっているオペラハウス。台中の文化拠点として歩み続けている。 

National Taichung Theater

 

臺中國家歌劇院

National Taichung Theater

ADRESS:台中市西屯區惠來路二段101

TEL:+886-4-2251-1777

URL:https://www.npac-ntt.org/