作品寄贈にも支えられ、 発展止まぬ世界屈指の美の殿堂〈メトロポリタン美術館〉

作品寄贈にも支えられ、 発展止まぬ世界屈指の美の殿堂〈メトロポリタン美術館〉

セントラル・パークの東側、五番街に向かって立つ美術館。
ここは公営ではなく、私営の文化施設であり、世界最大級の規模を誇る。基金を設立し、さらに個人寄贈により、所蔵品は300万点に及ぶ。

Ⓒ Photo by Brett Beyer, courtesy of The Metropolitan Museum of Art
Ⓒ The Metropolitan Museum of Art

1870年に創設されたメトロポリタン美術館(通称The Met)は、米国最大の美術館として、約300万点の収蔵品を誇る。
館内は30以上の部門に分かれ、 5000年を超える人類の芸術遺産を所蔵する。

古代エジプトやギリシャ・ローマ時代の作品、中世ヨーロッパの名画、アメリカの近現代美術、アジア、イスラム、アフリカの芸術品など、コレクションは多岐に渡る。

Ⓒ Photo by Filip Wolak, courtesy of The Metropolitan Museum of Art

The Met が創設された19世紀半ばのアメリカは、急速な経済成長を遂げる一方、文化面ではヨーロッパに劣るとされていた。

この状況を変えるべく、ニューヨークの知識人や経済界の指導者たちが、この美術館の創設に尽力した。

パリのルーブル美術館やロンドンの大英博物館が国立美術館であるのに対し、 The Metは創設当初から国の援助を受けず、民間の支援で運営されてきた。

その礎を築いたのが、多くの篤志家だ。ニューヨークの実業家、銀行家、弁護士、政治家、文化人などが資金の提供のみならず、美術品の寄贈や運営にまで関与し、美術館の発展を支えてきた。

現在、美術館の年間予算は約3億ドル(約450億円)に達し、その多くが寄付で賄われている。

中でも最大の支援が個人パトロンによる寄付だ。著名な富豪や文化人が継続的に資金援助を行っている。

さらに、The Metには「エンダウメント」という基金がある。

これは美術館や大学などの非営利機関が長期的な財務の安定を確保するために設けるもので、運用益を施設の運営費に充て、元本は維持される。

2023年度時点で、The Met のエンダウメントは約30億ドル(約4500億円)と推定され、世界屈指の規模を誇る。

この資産は永年にわたり篤志家の寄付で積み立てられ、金融市場で運用され、安定した収入を生み出している。

また富裕層やコレクターからの美術品の寄贈もThe Met の運営を支えている。

収蔵品の9割は寄贈品によって構成され、美術館の膨大なコレクションを形成している。

盤石な財政基盤と膨大なコレクションにより、美術館は今も成長を続けている。篤志家たちのパトロネージュの理念が、美の集大成として結実しているのだ。