ホワイトハウスの晩餐会にて主役を張った日本人醸造家のワイン
かつて長澤鼎が土を踏んだソノマのロシアン・リヴァー・ヴァレー。21世紀の現代、再びこの地から、日本人醸造家が世界に躍り出た。アキコ・フリーマンさん。そしてワインは思わぬ絆をつなぐことに。
長澤鼎が没して70年が過ぎた2004年、ロシアン・リヴァー・ヴァレーでつくられた日本人醸造家によるワインが脚光を浴びた。アキコ・フリーマン氏が高名なワインコンサルタントのエド・カーツマン氏に学びながら、夫のケン・フリーマン氏とワイナリーを開いてまだ3年の頃だ。初めてのリリースとなる2002年ヴィンテージを国際的なコンペティションに出品すると、フランスのグランクリュをおさえて、いきなり金賞に輝いた。〈フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー〉は、一躍カリフォルニアワインの表舞台に立った。
東京で生まれ、米国の大学で美術史の博士号を取得した後、世界の銘醸ワインの生産地を探測するためにアキコ氏はヨーロッパを巡った。そして帰米後、夫との夢だったブルゴーニュスタイルのワインづくりに乗り出す。最高のピノ・ノワールとシャルドネを育てるため、二人が選び抜いた地はロシアン・リヴァー・ヴァレー。西ソノマ地域はアラスカからの寒流の影響で、夏でも夜は肌寒い。昼夜の寒暖差はブドウの糖度を高めるのに欠かせないという。

製法はブルゴーニュ方式に徹する。ブドウは一房ずつ手で除梗。低温で数日寝かせた後、発酵へ。その後、フレンチオークの小樽に移して熟成に移る。当初はカーツマン氏とアキコ氏が熟成中の樽を試飲し、ブレンディング。こうして「アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト」は生まれた。2010年には師よりお墨付きを得、アキコ氏は醸造家として独り立ちした。
フリーマン夫妻の努力が大きく実ったのは2015年の春だ。安倍元首相訪米の際、オバマ元大統領が主宰したホワイトハウスでの公式晩餐会に、フリーマンの「涼風シャルドネ2013」が選ばれた。新興ワイナリーにとっては大変な栄誉だ。24年の岸田元首相訪米時の昼食会にも、フリーマンがホワイトハウスのテーブルを飾った。
さて本特集前半はカリフォルニアワインを軸に日米の人のつながりを振り返るものだが、ここで興味深いエピソードを挙げたい。昨年、アキコ・フリーマン氏はディレクターとして全体を指揮する立場に移った。そこで新たにワイナリーは、醸造家に赤星映司ダニエル氏を迎えた。南米チリで育ち、ハワイ大学で学んだ同氏が父親にワインメーカーを志すと伝えると、先祖に同じ道を目指した人がいると聞かされる。他でもない、それは長澤鼎だった。

ダニエル氏から4代前、高祖父の兄にあたるのが長澤だ。しかしそれを知らずに醸造家を目指したとのこと。縁はそればかりではない。ダニエル氏から3代前の赤星鉄馬は有名な実業家だったが、関東大震災で自邸を焼失。その焼け跡地を赤星家から購入したのは旧三菱財閥当主の岩崎家だが、実はアキコ・フリーマン氏の祖母は岩崎弥太郎の長女の姪にあたるという。何やらカリフォルニアワインが、双樹のファミリーツリーを結ぶかのような話ではある。

昨年、トランプ大統領来日の際、駐日米大使は晩餐会を開催。そこで開栓されたのは「アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ウエスト・ソノマ・コースト2022」だ。フリーマンは銘醸への階段をまた一つ上った。

Freeman Vineyard & Wineryフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー
ADRESS:1300 Montgomery road, Sebastopol,
CA 95472
TEL:+1-707-823-6937
URL:https://www.freemanwinery.com/#jp