
ブルゴーニュが世界に誇る 綺羅星のごときグラン・クリュ
ボルドーと双璧をなすフランスのワイン産地がブルゴーニュだ。
フランス東部の内陸地にあり、赤はピノ・ノワール、白はシャルドネというブドウ品種から、人々を魅了するワインが造られる。
特に銘醸地と見なされているのが、ディジョン市の南からマランジュの3 つの村まで続く“コート・ドール(黄金丘陵)”で、珠玉のグラン・クリュ(特級畑)やプルミエ・クリュ(一級畑)が東向きの斜面に連なっている。
毎年収穫が終わるとブドウの葉の色は緑から黄や赤に変化していく。
朝日を浴びたブドウ畑の美しい光景は、まさに黄金丘陵と呼ぶにふさわしい。
そのコート・ドールにあって、燦然と輝くグラン・クリュがロマネ・コンティだ。
畑の面積はわずか1.81ヘクタール。豊作年でも生産可能な本数は6000本に過ぎない。
その僅かな数をめぐり世界中の愛好家が争奪戦を繰り広げるのだから、価格が高騰するのも無理はない。
2018年にサザビーズの競売にかけられた1945年のロマネ・コンティの落札額は55万8000ドル(当時のレートで6300万円)。
もはや醸造酒というより、美術品の領域である。
ロマネ・コンティを所有するのはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)。グラン・クリュのワインのみを造り、ロマネ・コンティの他、ラ・ターシュ、リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン、グランゼシェゾー、エシェゾー、モンラッシェにブドウ畑を所有。
21世紀に入ってからはオーナーからの委託で、コルトンとコルトン・シャルルマーニュも醸造している。
ラ・ターシュはロマネ・コンティと同じくDRCのモノポール(単独所有)で、ラ・グランド・リューという他所の畑を挟み、ロマネ・コンティの南に位置する。
単一の同じブドウ品種から造られているにもかかわらず、わずかな距離の差でワインの風味に微妙な変化が生じるのは、ブルゴーニュの神秘というより他ない。
ロマネ・コンティのあるヴォーヌ・ロマネ村を北上し、モレ・サン・ドニ村に入る。
この村にあるグラン・クリュのひとつ、クロ・デ・ランブレイの大部分を所有するドメーヌ・デ・ランブレイは、2014年からLVMHグループ傘下にある。
2018年に、1918年ヴィンテージまでさかのぼるクロ・デ・ランブレイの年代別垂直試飲会が開催された。
100年の熟成期間を経ても果実味を失っていない1918年に脱帽するとともに、1934年の緻密さと凝縮感、香りの多層性にも心底感服した。
美味礼讃。モナコでは星付きシェフの共演、パリでは日仏シェフの協奏、そして締めくくりはフランスの銘醸ワイン。美食の旅ほど、人を幸福にさせるものもない。