この国のデザイン哲学を 専門ミュージアムで学ぶ
フィンランドがデザインの王国であると改めて納得させられる文化施設が、この「建築・デザイン博物館」だ。左ページの国立美術館がファインアートの総本山であるならば、こちらはまさに世界中に流通してきたフィンランド発のインダストリアルデザインの城。大きな博物館ではないが、1階部分では同国の代表的なプロダクツが時系列で公開されており、その展示には関心が寄せられる。
第一の部屋にはフィンランドが世界に誇るブランドのプロダクツを展示。日本でも人気の高いファッションブランドの〈マリメッコ〉や、シンプルな持ち手が使いやすい定番ハサミの〈フィスカース〉、さらには懐かしい〈ノキア〉の携帯電話なども展示。老若男女を問わず、時間を忘れて楽しめるミュージアムだ。

デザインに触れながら、それぞれのプロダクツが誕生した背景を知るのはなかなか興味深い。たとえば〈フィスカース〉は創立が17世紀と古い企業であるが、国際的に知られるようになったのは、1967年に世界初のプラスチック製ハンドルを備えた軽量ハサミを発売したことがきっかけだった。また1951年創立の〈マリメッコ〉は、戦争が繰り返される暗黒の時代を生きてきたフィンランドの女性たちに、明るい色彩デザインの洋服を提供することで大きな支持を得た。アアルトが建物に大きな窓をデザインして人々に光をもたらしたように、〈マリメッコ〉は人々に色をもたらした。それは華美に装飾されたモードではなく、あくまでも一般の人々が日常的に楽しめるようなデザインだった。
興味をそそられるプロダクツには枚挙にいとまがない。女性向けとして、ハイヒールが装着された義足が展示されている。一方では簡単に設営でき、かつ大量生産できる宇宙船のようなデザインの住宅模型もある。それらは特別な人のための高価で貴重な“一点もの”ではなく、大衆に広く行き渡るようにと考えられたものだ。これこそがフィンランドのデザイン哲学だ。

近年、フィンランドは国連による幸福度調査で連続してランク1位となっている。この国がデザインの力で日常生活を快適でストレスフリーに保つことができていることもまた、ランキングのひとつの理由かもしれない。そんな学びのある博物館だ。
The Architecture and
Design Museum
建築・デザイン博物館

住所:Korkeavuorenkatu 23, Helsinki
電話:+358 9 6220 5400
URL:https://admuseo.fi/en/