概念が変わる“包丁”<本家かね惣>
1873年、明治6年創業の<本家かね惣>。
東京は浅草にある刃物専門店だ。
数多くの著名な料理人御用達でありつつも、一般の方にも丁寧かつ確かなアドバイスで商品を選んでくれる下町の気質を感じられる名店である。
「良い包丁は、やっぱり材料と作り手なんです」と5代目である平野惣一氏は言う。
本家かね惣で扱う包丁は鋼とステンレスだが最高の部材であればあるほど扱いは難しく、どう焼き、冷まし、叩くのか。
それを活かせる職人の技がなければ最高品質は生まれない。
とりわけ鋼の切れ味は抜群であるが、その管理は徹底しないと錆が容易に入ってしまう。
「表面の錆なら研げますが、中まで入ってしまうと難しい」。
そういったなかで現在は炭素鋼の切れ味とステンレスの錆にくさを兼ね備えた最高級ステンレス、VG10が人気だ。
もちろん最高級の刃に見合う持ち手にもこだわり、和包丁の定番である朴をはじめ、洋包丁にはマホガニーなども取り揃える。
その持ち手を握ると、まず驚くのは軽さとバランスの良さ。
刃の切れ味と調和して余分な力を入れずに食材が進むように切れていく実感は包丁の概念を変えていく。
店内には選びぬかれた和包丁と洋包丁が並ぶ。
世界中のプロが愛する専門店で用途や好みなどを相談のうえ、しっかりとしたものを選べる。
希望者にはサービスで文字を入れることも可能。
目の前で文字を打ち込んでくれる。そして最後の魂を吹き込むのは研ぎ、だ。
本家かね惣では購入時にしっかりと研ぐことで最高の切れ味を生み出している。
「どうしても200本に1本くらいは焼きが甘かったりムラがあるので、それを見極めるためにもやっています。少しでも違和感があった場合は新しいものを研がさせていただきます」。
こういった姿勢がしっかりと顧客満足度へと繋がり、その名声は海外にまで届いている。
海外のシェフが定期的に購入、メンテナンスをおこなうだけでなく、フランスの資産家が毎年、包丁を20本以上購入していくほどだ。
世界が欲する伝統の切れ味を、その手で確かめてほしい。
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平野惣一
東京は浅草で続く本家かね惣5代目。先代より培われた包丁を扱う技術、見る目をもとに、現在は6代目とともに日本の包丁の素晴らしさを伝えている。
本家かね惣
- 住所:
- 東京都台東区浅草1-17-9
- 電話番号:
- 03-3843-5144
- 営業時間:
- 10:30~18:00 土曜、日曜、祝日10:30~18:00