
菓子楊枝に極まる美しさを
室町時代に生まれ、千利休によって大成した茶の湯。
いまなお茶道は日本の精神を象徴する伝統文化として息づいている。
茶道具の作り手にも優れた職人がおり、第16代 金谷五良三郎氏は、茶道具や諸銅器などを作り上げる金物職人として有名な人物のひとりだ。
金属工芸品のデザイン製作や文化財古美術品の修理複製など、その仕事は多岐に渡る。
「茶道具を作る際には只の鑑賞品ではなく、道具として使うことを第一に考えて他の道具とのバランスを想像します。茶会により取り合わせや趣向は様々ですが、ひとつの道具だけが強く主張し、それだけで完結することのない『自己中心的』な道具は作らないようにしています」。
そう語る第16代金谷氏が、京都の菓子職人・京菓子司・金谷正廣の6代目となる金谷亘氏とのコラボレーションによって作り上げたのがこの黒文字(菓子楊枝)。
黒文字は、もともとは植物の名前。
しなやかで強度があるため高級品として扱われ、茶席では茶菓子用の楊枝として使用されている。
この度の共作について第16代金谷氏は、「プロフェッショナルとの協力は楽しさとワクワク感があり、制作が非常に充実したものになった」と振り返る。
(上)「幻日」11,000円(税込)
(最上段)「立鶴 金・銀」各11,000円(税込)
金物と京菓子、ふたつの伝統を継承する職人の息吹が吹き込まれた“究極の菓子楊枝”は2種類生まれ、「幻日」、「立鶴金・銀」と名付けられた。
「幻日」は日本刀や妖艶な雰囲気をテーマに、長短のバリエーションを試行錯誤して完成した“計算された無骨さ”が感じられる逸品。
一方、「立鶴 金・銀」は縁起物として伝統的な鱗鶴の形を採用し、金と銀の色合いや風合いを重視。
艶消しの柔らかな仕上がりが特徴的だ。
どちらもデザインと世界観を大事にしながら、使いやすさにも目が行き届いた出来となっている。
異なる伝統技術の感性が見事に融合した「幻日」と「立鶴 金・銀」。
その美しさは茶道の席にふさわしいだけでなく、普段使いでも日常に特別な光が差し込むような喜びを味わうことができるだろう。
■金谷五良三郎
京都を代表する金物師。1581年の初代金谷五良三郎から数えて16代目となる。茶道具金属工芸品のデザイン製作のみならず文化財古美術品の修理複製等も手掛ける。