生活芸術として ウィーン近代に咲いた美の精神
ウィーンが誇るふたつの美の時代、19世紀前半のビーダーマイヤー様式と、20世紀初頭の世紀末のデザイン革新。これらを通観する大規模展「ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り」が、パナソニック汐留美術館にて開催されている。展示されている約270点に及ぶ選び抜かれた工芸品は、ウィーンという都市が育んだ独自の美学と近代性を静かに語る。
ビーダーマイヤー様式の特色は、簡潔さと日常に根ざした実用性、抑制の美に表れている。マホガニーなど上質な木材と職人の手技による家具、幾何学的で簡潔な銀器や陶磁器、ガラス作品、身に着ける者を引き立てる節度ある装飾のドレスやジュエリー。こうした造形理念は、100年後の世紀末デザイナーたちに再発見され、ウィーン工房により昇華、独自の「ウィーンスタイル」を生み出した。

展覧会では、オットー・ヴァーグナーの「実用様式」をはじめ、ヨーゼフ・ホフマンやコロマン・モーザーによるモダンデザインの名品群が揃う。さらに、グスタフ・クリムトの《17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像》や、フェミニズム的視点から再評価されつつある女性デザイナーたちの多彩な仕事にも光が当てられている点は特筆に値する。

“生活は芸術である”という理念のもと、装飾と機能、芸術と日常が見事に融合した「ウィーン・スタイル」は、現代においてもなお私たちの感性に響く。本展は、そうした文化的精神の継承と変容を体感できる貴重な場である。
《サモワール》 1838年 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ⒸAsenbaum PhotoArchive, Fotografen: Brigit und Peter Kainz
ヨーゼフ・ホフマン《 センターピース》 1924~25年 ギャラリー イヴ・マコー協力 Courtesy Gallery Yves Macaux, ⒸYves Macaux
ダゴベルト・ペッヒェ《箪笥(ウィーン工房チューリッヒ支店の家具の一部)》1917年 エルンスト・プロイル・コレクション Ernst Ploil Collection, ⒸChristian Mendez / MAK
《椅子》1820年頃 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ⒸAsenbaum Photo Archive
ダゴベルト・ペッヒェ《レース》1920年頃 エルンスト・プロイル・コレクション Ernst Ploil Collection, ⒸErnst Ploil, Fotografen:Brigit und Peter Kainz
■会期:2025年10月4日~12月17日
※会期中一部展示替えが行われる。前期10月4日~11月11日、後期11月13日~12月17日。11月13日
以降に再入場の場合は、半券提示で100円割引。
■会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4 階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)、12月5日、12月12日、13日は20:00まで開館(入館は19:30まで)
休館日:水曜日(ただし12月17日は開館)
料金:一般=1,500円/65歳以上=1,400円/大学生・高校生=1,000円 /中学生以下=無料
※障がい者手帳を提示の方、および付添者1名まで無料で入館可能。
※土・日・祝日は日時指定予約が必要 (平日は予約不要)。 当日空きがあれば入館可能。混雑状況に
より入館方法が変更になる場合あり。