当主の眼が選び抜いた 〈山田平安堂セレクション〉

当主の眼が選び抜いた 〈山田平安堂セレクション〉

宮内庁御用達として知られる漆器店〈山田平安堂〉。この老舗には、定番商品や量産品とは異なる、もうひとつの静かな魅力がある。それが、石川県輪島の職人による作品から、歴代当主の審美眼によって選び抜かれた〈山田平安堂セレクション〉である。

このセレクションに並ぶのはすべて一点ものであり、造形、塗り、加飾、そしてそこに宿る空気感まで含めて、作り手の思想と時間の積み重ねが感じられるものだけが選ばれている。量を追わず、手の痕跡が濃く残る作品を扱う姿勢は、効率や均質化が進む現代において、稀有な存在といえるだろう。

たとえば『脚付小箱「円」』。地球儀のような造形に、西洋の美と東洋の美が交差する意匠が施されている。この作品は能登半島地震の後に仕上げられたもので、「円」には人との縁、そして円=輪から輪島への想いが込められているという。曲面に金線で円を描き、螺鈿を緻密に貼り込むなど、極めて高度な技法が用いられているが、それらは決して技巧を誇示するためのものではない。作り手の想いを余すことなく伝えるための手段としての技法であり、彼らの想いが静かに伝わってくる作品だ。

『八角小箱 蓬莱山』もまた、象徴性と技術が高い次元で結びついた作品である。丹頂鶴、蓑亀、蓬莱山など8つの吉祥文様と高蒔絵、螺鈿、卵殻など8つの技巧が、手のひらサイズの小箱に凝縮されている。8(八)という漢字は、「末広がり」の意味や、8を横に倒すと無限大になることから、無限大にうまくいくという縁起があり、小箱に収まりきらないほどの吉祥が込められている。こちらも、作り手が持ち主の幸福を願って制作したことが自然と伝わってくる。

〈山田平安堂セレクション〉は、こうした名品を「鑑賞用の工芸品」としてではなく、
あくまで暮らしの中に置くことを前提としている。使い続けることで漆の表情は変化
し、持ち主の時間が静かに重なっていく。そこにこそ漆器本来の価値がある。

歴史に裏打ちされた格式を備えながら、なお現代にふさわしいものを見極めることは容易ではない。〈山田平安堂セレクション〉は、流行や価格といった尺度では測れない価値を知る人にこそ、響くシリーズである。

脚付小箱「円」
サイズ:直径8cm×高さ13cm
仕様:天然木/漆塗(輪島塗)
価格:605,000円(税込)

蓬莱山 八角小箱
サイズ:直径7.5cm×厚み3.5cm
仕様:天然木/漆塗(輪島塗)
価格:1,760,000円(税込)

お問い合わせ:03-3464-5541
(10:30~19:00、日曜・祝日~18:30)