”ホルモンが教える再出発のサイン 更年期と向き合う新常識”
心と体が変化を迎える更年期。
男女ともに心身のバランスを崩すことがあるこの時期をどう受け止め、乗り越えるべきなのか。
フェニックス メディカル クリニックの賀来哲明氏に、
男女で異なる更年期の実態と、優雅に生きるためのヒントを伺った。
更年期の男女の違いと
正しい向き合い方
―更年期は男性と女性で違うのでしょうか?
賀来 更年期は、性ホルモンの低下で起こる心身の変化です。女性では平均閉経年齢50歳の前後5年が目安で、閉経を境に女性ホルモンが急激に減少します。そのため、ほてり(ホットフラッシュ)や発汗、睡眠の質の低下など、体調の波が強く出やすいのが特徴です。一方、男性は性ホルモンであるテストステロンが20~30代をピークに、年1%ずつゆるやかに減少します。下がり方が穏やかで、自覚しにくい人も多く、80歳でも高い数値を保つ人もいます。女性は「急な波」、男性は「なだらかな線」と捉えると分かりやすいでしょう。

―男性更年期は「見えにくい」と言われますが、なぜでしょうか。
賀来 大きくふたつの理由があります。ひとつは、男性ホルモンが常に分泌されているため、低下が徐々に現れるので自覚しにくく、意欲や集中力、社交性など「心の変化」として現れやすいこと。 もうひとつは、ストレスとの関係です。ストレスで分泌されるコルチゾールがホルモンの経路を抑え、テストステロンの分泌を抑えてしまいます。プレッシャーや生活リズムの乱れが続くと、気づかないうちに悪化します。
逆に、自己肯定感が高いとホルモンは維持されやすい傾向があります。年齢よりも生活環境の影響が大きく、20代でも不調が出ることがあります。
―どんなサインが受診の目安になりますか。
賀来 女性は、生理の乱れを合図に次の症状がふたつ以上あれば相談をおすすめします。
チェック項目
□ホットフラッシュや発汗が業務や睡眠を妨げている。
□睡眠の質が低下し、朝から疲労感が強い。
□理由のない不安や怒り、悲しみが増えたと感じる。
□肌や髪のハリが低下。
□骨密度の低下や体重増加が気になり始めた。
□集中力が続かない。
子宮筋腫などの疾患がある場合は出血や貧血が強くなるため、放置せず婦人科へ。
男性は自覚しづらいので、次のようなサインが3つ以上あれば専門医に相談を。
チェック項目
□朝起きても疲れが取れず、業務開始から倦怠感が強い。
□些細なことでいらだちやすく、集中力が続かない。
□性欲や活力が明らかに低下し、人間関係にも影響が出ている。
□体重が増え、筋肉量が落ちたと感じる。
□意欲やチャレンジ精神が低下し、決断に時間がかかる。
□急に落ち込みやすくなったり、やる気がわかない日が続いている。
40代以降は健康診断とあわせてホルモン検査を定点観測として取り入れるのも有効です。
―どんな治療法をするのでしょうか?
賀来 女性は「体質を整える漢方療法を40代中盤から取り入れ不調を軽くする」「閉経後は必要に応じてホルモン補充療法(HRT)を検討する」の二段構えが基本です。HRTは骨粗鬆症や心血管リスクを減らす効果も期待できます。海外では、ほてりを抑える非ホルモン薬も登場しています(日本では未承認)。
男性は、テストステロン補充療法(塗布薬など)と生活改善を併用します。補充により一時的に精子数が減るため、妊活期は注意が必要です。十分な睡眠、筋トレ、規則正しい生活がホルモンのバランスを整えます。
更年期は自然な生理現象であり、特に女性は文化的に「自然に任せるべき」との価値観が強く、男性でも治療を受けることを弱さと捉えがちです。しかし、症状が日常生活や仕事に支障をきたす場合、医療介入は単なる対症療法ではなく、個々の健康資本を維持するために必要なものと考えるべきでしょう。
周囲の人々が知識を
得ることも大切
―企業や組織は更年期とどう向き合うべきですか。
賀来 かつては更年期=仕事の終わりでした。ただ、いまは定年が延び長く働く時代となってきているので、更年期と仕事の時期が重なります。必要なのは本人の「我慢」でも周囲の「特別扱い」でもなく、正しい知識と環境づくりです。管理職研修などで男女の更年期について理解を深め、受診を促す体制を整えることが大切です。女性の活躍推進と同時に、男性更年期への理解も欠かせません。
また、企業や組織のトップが更年期による自分の揺らぎを認め、周囲のサポートを受け入れる姿勢を示すことで、社内のウェルビーイング文化が醸成させれ、社員のロイヤルティ(愛着・忠誠)とパフォーマンス向上につながります。
―更年期を迎える人たちへメッセージを。
賀来 更年期は終わりではなく再出発です。体のメンテナンスとライフスタイルの見直しの時期。体の変化をサインとして受け取り、生活や働き方を見直す時期と考えてください。丁寧に自分の体と向き合い、適切な医療と自己マネジメントで、美しく進化する道を歩みましょう。
賀来哲明
医療法人社団鳳凰会フェニックスメディカル クリニック医長、産婦人科医長。2014年、東京医科大学医学部医学科卒業。同年より東京大学医学部付属病院にて医師として従事。2020年より現職に就任。
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