
奇岩の頂上に眠る廃宮、そして石窟寺院を巡る
スリランカとは「光り輝く島」を指す。
インド洋に浮かぶ自然豊かな島だ。
稀有な歴史遺産、セイロンティーの高原、トロピカルリゾートの原点。北海道ほどのこの南の国には、溢れるばかりの感動が待っていた。
スリランカの丘陵地帯には、世界有数の文化遺跡が点在する。
その一つ、天に聳える奇岩に、王宮を建てた王がいた。
近郊には2000年以上も前に仏像を祀った、石窟の寺院もある。
スリランカの大地を通り過ぎた、悠久の時間に思いを馳せる。
スリランカ丘陵地帯にある三古都を結ぶ地域は“カルチュラル・トライアングル”と呼ばれる。
それほど歴史的遺産が多い。中でも必見の世界遺産を紹介したい。
シーギリヤロックは高さ200m近くある奇岩。
全方向が断崖絶壁である。
登るには難儀を極めるが、1500年ほど昔、頂上に王宮を建てた王がいたという。
5世紀後半、同地方にダートゥセーナ王がいた。その王子カーシャパの母は平民出身であり、弟王子は王族の血筋だったため、将来に不安を抱き、父王を殺してしまう。
そして狂気にふれたごとく、奇岩の頂上に王宮を築き、弟に滅ぼされるまで18年間、王位に就いた。
今日、廃宮がある頂上まで登ることができる。
ただし途中、断崖に足場を組んだだけの箇所もあり、相当に注意が必要。
岩山中腹の壁土には、狂王が描かせた女性のフレスコ画が未だ鮮やかな色合いを残している。
それは敬虔な仏教画とは異なり、どことなく妖しさを思わせる画風だ。
驚くのは山頂の廃宮跡。巨大な岩には人間の背丈より大きなライオンの前足が彫刻されている。
かつて岩の上にはライオンの頭部もあったとか。
ちなみにスリランカ人の7割はアーリア系シンハラ人に属するが、これはアフリカのスワヒリ語でライオンを指す「シンバ」と同源とされる。
狂王はライオンを祖先として神聖視していたのかもしれない。
さてシーギリヤの近くダンブッラの町には、もう一つの世界遺産、石窟寺院がある。
紀元前1世紀から13世紀にかけて、洞窟の中に造られた寺院だ。
仏陀とともにヒンドゥー教のヴィシュヌ神が祀られた石窟もある。
古代南アジアの文化の深さを実感できる遺跡だ。
スリランカを時間旅行する思いである。