日仏シェフのコラボレーション 前衛的精神が光る「HAKUBA」

日仏シェフのコラボレーション 前衛的精神が光る「HAKUBA」

シュヴァル・ブラン パリの一角に、昨年3月、和食レストラン「HAKUBA」が誕生した。

「シュヴァル・ブラン」とは、フランス語で「白馬」の意味だ。料理長は日本人の渡邉卓也。

鮨懐石を謳う革新的な和食店として注目され、今年一つ星を獲得した。

「HAKUBA」を語る上で欠かせないのが、前掲「プレニチュード」のアルノー・ドンケルの存在だ。

彼は「HAKUBA」のレシピ構築やアイディアの精査、完成度の検証にも深く関わる。

「疑問を投げかけ、着地点に導くのが自分の役目」と語るドンケル。

その姿勢は協奏者にも喩えられる。

彼は和食にも前衛的な精神が息づいていると信じる。

「和食は過去への敬意とともに前衛的な力も内に秘めている。

タクヤはビジョンを持ちながら、その両方を体現している」と言う。

ⒸVincent Leroux

 

こうして「HAKUBA」からは伝統に根ざしながらも革新に満ちた料理が生まれている。

ヒメジなどの地中海産魚のブイヨンに、昆布や椎茸の出汁、紫蘇のペーストを合わせた汁物。

そして刺身に添える醤油を魚種ごとに調整するなど、繊細な工夫が光る。

渡邉シェフは語る。

「ドンケルシェフとの対話を通じて、全ての皿に明確な意図をもち、試作を重ねるという姿勢、そして妥協のない探究心を学びました。小さな美味しさの積み重ねが、お客様にとっての新鮮な驚きにつながる。HAKUBAでそれが確かなかたちになってきたと感じています」

妥協を許さない“味のマイナーチェンジ”の積み重ねこそ、ドンケルから学んだことだと言う渡邉。

香りを重ねる調香師のような発想は「HAKUBA」の料理にも息づき、複雑なソースを意識した一品も少なくない。

和と洋の境界を超えた、新しい和食の扉が開かれた。