
フランスの銘醸ワイナリーを巡る ボルドーの格付け一級シャトーへ
美食の共演の後には、フランスの代表的ワイン生産地を巡る。
まずはフランス三大ワイン産地のひとつ、ボルドーへ。
大西洋に面したフランス南西部に位置し、中でもジロンド川左岸のメドック地区は銘醸地として名高い。
カベルネ・ソーヴィニヨン種から造られる赤ワインは極めて長命で、ゆえに有名銘柄のヴィンテージものはしばしばオークションの対象となり、驚くほどの高価格で取り引きされる。
中でも注目すべきは、1855年の格付けで一級に選ばれたシャトーたち。
ラフィット、ラトゥール、マルゴー、オー・ブリオンに、1973年に唯一一級昇格を果たしたムートンを加えた、俗にボルドーの五大シャトーと呼ばれる銘柄だ。
格付け筆頭にあたるラフィットの正式な名前はシャトー・ラフィット・ロッチルド。
パリ・ロスチャイルド家のジェイムズ男爵が1868年に444万フランで買い取った。
その30年前に売買された一級銘柄のマルゴーが130万フランだった事実を鑑みるに、ラフィットの別格ぶりが窺い知れる。
ラフィットの素晴らしさは何よりもエレガントであること。
しかもそれは熟成を経て初めて現れる。
気品に溢れ、静謐な趣があると同時に優美でもある。
ルイ15世紀の寵姫、ポンパドゥール夫人を虜にしたというのもうなづける。
そのラフィットと対極にあるのがラトゥールだ。
五大シャトーの中で最も力強い味わいに溢れたワインを生む。
ラトゥールの現オーナーはケリング・グループを率いるフランソワ・ピノー。
1993年に6億8000万フラン(当時のレートで約120億円)で手に入れた。
大西洋に近いボルドーは湿気が多いためブドウの有機栽培が難しい地域だが、ラトゥールはこれを成功させた。
現在はさらに一歩進み、天体の運動まで農作業に取り入れたバイオダイナミック農法も試みている。
そして1855年の格付けで、メドックではなくグラーヴ地区から唯一選ばれたのがオー・ブリオン。
フランス革命期に駐仏アメリカ大使を務めた米国第3代大統領、トーマス・ジェファーソンのお気に入りだった。
今日のオー・ブリオンはメルロー種のブレンド比率が高いこともあって、飲み頃が訪れるのが早い。
そのあたりもアメリカ人好みといわれる所以である。
Château Lafite-Rothschild
1855年のメドック格付け筆頭に挙がった、シャトー・ラフィット・ロッチルド。その気品、優美さは他に類を見ない。ロスチャイルド家が世界に誇るシャトー。