鳳凰を宿す、 漆の工芸美

鳳凰を宿す、 漆の工芸美

広島県府中市で1855年に創業した〈松創〉は、宮大工、桐箪笥、漆指物の系譜を受け継ぎながら、和家具で磨かれてきた指物、塗り、磨きの技を、現代の家具づくりへと昇華してきた工房だ。大量生産とは一線を画し、材によっては3~10年もの歳月をかけて天然乾燥を施す。さらに、世界中から集めた希少材の突板(つきいた)を用い、和紙を裏打ちした突板や特殊貼りにも対応しながら、一点物の家具製作にも応えてきた。素材の表情を見極め、それを美しい意匠へと導く力こそ、この工房の真骨頂といえるだろう。

そうした〈松創〉の美意識と技術が、鮮やかに結実したのが『漆キャビネット 瑞鳳翔』である。深みのある濃紺の漆面に、吉祥の象徴である鳳凰が大きく羽を広げる姿は、ひと目で空間の空気を変えるほどの強い気配を宿している。中国神話において鳳凰は、徳ある時代に現れ、上昇、成功、富、平安をもたらす瑞鳥とされる存在。その飛翔の瞬間を、家具というかたちの中に封じ込めたのが本作だ。

表現の核を担うのは、漆面に繊細な彫りを施し、その溝に金を擦り込んで文様を浮かび上がらせる伝統技法、沈金(ちんきん)。『瑞鳳翔』では羽一枚ごとに緻密な彫りが重ねられ、小さな羽でも60~70、大きな羽では100もの彫りが施されるという。金粉やプラチナ粉、顔料を重ねた翼には虹彩のような奥行きが生まれ、周囲に散らされた金箔が静かなきらめきを添える。その表情は、光を受けるたびにわずかに揺らぎ、霊鳥の気配をいっそう際立たせる。

扉を開けば、内側には桐の花と葉が沈金で描かれ、抽斗内部に至るまで白漆で整えられている。古来、「鳳凰は桐にのみ宿る」とされてきた伝承を踏まえ、表に鳳凰、内に桐を配した構成もまた印象的だ。京塗りの技法を用いた本堅地で、下塗りだけでも40以上の工程を約1年かけて重ね、加飾を含めれば完成までに約3年を要するという。それは単に美しい家具ではなく、空間そのものの格を問い、持ち主の審美眼と矜持までも映し出す存在なのである。

漆キャビネット 瑞鳳翔

サイズ:幅1,000mm×奥行500mm×高さ1,800mm
価格:41,800,000円(税込)

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GINZA松創
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定休日:水曜日