時代や地域を越えて 人々を魅了する 「中央アジアの手仕事」

時代や地域を越えて 人々を魅了する 「中央アジアの手仕事」

アジアとヨーロッパを結ぶ文明の回廊、シルクロード。交易の道であると同時に、多様な民族と文化が交錯し、新たな美を生み出してきたこの地において、生活と密接に結びついた手仕事は独自の発展を遂げてきた。日本でも古くから関心を集めていたシルクロードの文化圏において、中央アジアは長らく情報が限られ、その実像が広く知られる機会は多くなかった。だが近年、大阪・関西万博などを機に注目が高まり、その文化的蓄積に光を当てる展覧会「中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー広島県立美術館コレクションより―」が、渋谷区立松濤美術館にて開催されている。

本展は、ウズベクおよびトルクメンの染織と装身具に焦点を当てたものだ。中央アジアに息づく美意識と生活文化を、刺繍とジュエリーというふたつの系譜から通観する。

ウズベクのオアシス都市に育まれた刺繍布“スザニ”は、その象徴的存在である。幾何学と植物文様が織りなす構成と鮮やかな色彩は、婚礼や祈りといった人生の節目に深く関わってきた。女性たちが分担して施した刺繍は、差異を内包しながらも一体の布として完成し、共同体の記憶と時間を織り込んでいく。

一方、遊牧を基盤としたトルクメンの装身具は、日々の暮らしと深く結びついている。銀は清浄の象徴とされ、宝石カーネリアンの赤は災厄から身を守る力を宿すと信じられてきた。重厚なジュエリーは、装飾であると同時に護符であり、社会的役割を示す記号でもあった。

時代や地域を越えて人々を魅了し続ける手仕事の数々。それは祈りや記憶、そして生の知恵がかたちとなったものである。中央アジアにおいて、美とは生活そのものであった。その感性のあり方を、静かに現在へと差し出す展覧会である。

中央アジアの手仕事 
―華麗なる刺繍とジュエリー 
広島県立美術館コレクションより―

■会期:2026年4月11日(土)~6月14日(日)
■会場:渋谷区立松濤美術館
東京都渋谷区松濤2-14-14
03-3465-9421
10:00~18:00(金曜のみ20:00まで)※入館は閉館時間の30分前まで
月曜日
一般=1,000円(800円)、大学生800円(640円)、
  高校生・60歳以上500円(400円)、小中学生100円(80円)
※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日は小中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者及び付添の方1名は無料