時を超えてきた驚異の遺跡群
アンコール・ワット以外にも見るべき遺跡は多い。
巨樹が根を張る寺院、仏塔彫刻、東洋のモナリザ。
遺跡からは、今日も新たな事実が報告されている。
アンコール・ワット造営から半世紀後、隣地に一段と広い王都が造られた。それはアンコール・トムと呼ばれ、中心にはバイヨン寺院がある。こちらの都を建造したジャヤヴァルマン7世は仏教信者であり、よってバイヨンの有名な四面塔は仏教の観世音菩薩。穏やかに微笑む巨大な顔は3mもある。

巨木に押しつぶされそうな寺院タ・プロームも同王の建造。うねるように遺跡の上に根が張る光景は、まるで怪物を見る思いだ。こちらも元は仏教寺院であったが、後にヒンドゥー教寺院に改宗された。改宗の際、異教の偶像を破壊する行為は珍しくなく、2025年もタ・プロームから首のない仏像が発掘されている。調査を続けた結果、100年前にフランスの調査団が発見していた仏頭が、その仏像の頭部だと最近になって判明した。国際的な調査・修復組織により、現在もアンコール遺跡群からは新たな発見が報告されている。

1992年、カンボジアの民主化を支援するUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)が設立。同年、アンコール遺跡群はユネスコの世界遺産に登録され、外国調査団のリードによる調査・修復が本格化する。以降、今日まで様々な国際協力が続いているが、共通するのは、あくまでも「カンボジア人自身による活動」を支えるという姿勢だ。
民主化から30年、遺跡群はオーバーツーリズムが指摘されるほど活況化した。また、いくつかの遺跡は崩壊が危惧されている。修復・保存に勤しむ現地の人々と同じ意識で、世界遺産に触れていきたい。