北欧デザインの王国 フィンランドをゆく

北欧デザインの王国 フィンランドをゆく

一年の半分、長い夜を過ごすフィンランドでは、デザインは生活を彩る重要なエレメントだ。

屋内のライフスタイルをいかに豊かに彩るか、そんな願いから北欧デザインは発展した。

本特集では、同国が世界に誇る20世紀建築の巨匠、アルヴァ・アアルトの足跡を訪ね、さらには美しさと豊かさをキーワードに、首都ヘルシンキの魅力を探し歩いた。

 

Text by Shie Iwasa
Photo by Daisuke Akita
Special Thanks to Visit Finland, Helsinki Partners

 

Part.1

建築・デザインの巨星

アルヴァ・アアルトを追う

 

20世紀の建築・デザイン界を代表する建築家、アルヴァ・アアルト。

彼を語らずしてノルディックデザインの全貌を俯瞰することはできない。

没後50年を迎えた現在も、世界中から見学者が関連施設を訪れている。

 

国土面積の70%超を森林が占めるフィンランド。この自然豊かな国から生まれる温かみのあるデザインは、一様に高い機能性を備え、シンプルで美しい。冬が長いフィンランドでは、屋内にいても自然を感じながら気持ちを明るく保てることが重要だ。こうしてこの国でデザインが発達し、人々は優れたアートや家具などに囲まれながら幸福度の高い生活を送っている。

フィンランドのデザインを語るとき、必ず名が挙がるのが、建築家・プロダクトデザイナーのアルヴァ・アアルトだ。フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエとも並び称される、20世紀モダニズム建築の巨星である。フィンランドだけでなく、デンマークやドイツ、遠く米国にも建築作品は多く残され、その数は200にも上る。国内13のアアルト建築物群は2025年、ユネスコの世界文化遺産に登録申請され、今夏出されるその結果に期待が寄せられている。

1898年にフィンランド中西部の小さな村クオルタネで生まれたアルヴァ。祖父と父は森林管理者であった。本人はヘルシンキ工科大学(現在はアアルト大学と改名)で建築を学び、建築家としての道を歩む。1923年、自身の建築事務所をユヴァスキュラで開業すると、その翌年、大学の学友だったアイノ・マルシオと結婚。以降、アアルト夫妻は四半世紀にわたり、二人三脚で多くの傑出したデザインを世に送り出した。

アアルトの建築作品には緩やかなカーブが多く見られ、そこには自然物をイメージさせる有機的な温かみが通底している。さらには天井や壁の高い位置に大胆に窓を配することで、自然光を多く取り入れる手法も活用し、フィンランド人たちに愛されてきた。ヘルシンキの閑静な一角に、保存・公開されているアアルト夫妻の自邸とスタジオは、まさしくふたりの思想を具現化させた建築空間である。

1936年に完成した自邸ではリビングやダイニングルーム、寝室まで当時のまま。また生活の場であっただけでなく、近隣に独立したスタジオが建つまで、そこは夫妻の仕事場でもあった。上の設計関連用具や図面は自邸で公開されているもの。下って1955年には、曲面構造が印象的な下写真のスタジオが完成する。外壁は弧を描き、室内から見ると、窓の際には代表作であるスツールが並べられ、外に広がる階段状の緑豊かな中庭を眺めることができる。そして天井近くの窓からは光が燦々と注ぐ。

一方でアアルトは建築と並び、プロダクトデザインにおいても機能性と美しさの調和を追求した。その思想を象徴する家具が左写真の名高いアームチェアだ。次に向かったのは、このチェア誕生の地だった。

 

アルヴァ・アアルト(18981976)。フィンランドが生んだモダニズム建築の巨匠であり、家具やインテリア雑貨などのプロダクトデザイナーとしても世界的に評価されている。米国マサチューセッツ工科大学客員教授を務め、晩年はフィンランド・アカデミー会長に就任。

 

Studio Aalto

スタジオ・アアルト

住所:Tiilimäki 20 Helsinki

URL:https://www.alvaraalto.fi/en/visit/#