
モナコ、フランス 美食を奏でるシンフォニー
ミシュランの星付きシェフがモナコの最上級ホテルに二人ずつ揃い、
共演ディナーを繰り広げる“フェスティバル・デ・ゼトワール”。
本年第3回は巨匠ヤニック・アレノがダヴィデ・オルダーニを迎えた。
一方パリの高級ホテルでは、三つ星シェフのアルノー・ドンケルが
同ホテル和食店のシェフ、渡邉卓也と創作和食を協奏する。
そして美食の旅は、フランスの三大ワイン名産地を巡っていく。
Text by Aya Ito
Photo ©MONTE-CARLO Société des Bains de Mer
モナコの五つ星ホテルにて 仏伊スターシェフの共演を開催
紺碧の地中海を臨む、世界有数の高級リゾート地モナコ公国。
ここで開催される美食の祭典“フェスティバル・デ・ゼトワール”は、今年5周年を迎えた。
ミシュランの星付きシェフたちによる豪華なディナーの共演であり、世界中のグルメから注目を集めるイベントへと成長している。
モナコからはアラン・デュカスを筆頭に星付きの4名のシェフが参加。
各シェフがフランスおよび世界からトップシェフを招き、4月から順にコラボレーションディナーを披露している。
本年1回目は、オテル・ド・パリ・モンテカルロの最上階にある一つ星「ル・グリル」で開催。
続く第2回目は、同ホテル内の三つ星「ルイ・キャーンズ―アラン・デュカス・ア・ロテル・ド・パリ」にて。
そして7月13日には、オテル・エルミタージュ・モンテカルロ内の一つ星「パヴィヨン・モンテカルロ ヤニック・アレノ」で開催された。
アレノはパリとクールシュヴェルで三つ星を得るフレンチの重鎮。
今回はイタリア・ミラノ郊外で二つ星「D’O」を営むダヴィデ・オルダーニを招いた。
長年の友情で結ばれた二人の共演は、心温まるひとときをゲストに提供する特別なディナーとなった。
絵画のように美しく、皿の上にサプライズが現れるオルダーニの料理に続き、地中海の豊かさを情感豊かに表現したアレノの料理が寄り添う。
二人の料理は、対話をするように交互にサーブされ、味覚の旅へと誘った。
その一例がオルダーニの前菜。茄子のキャラメリゼとトマトのコンポートに、27ヶ月熟成のグラナ・パダーノチーズの温かいクリームを重ね、クランブルを振りかける。
そして上には、生ハム風味のアイスクリーム。
温度、食感、旨みのコントラストに驚く一皿だ。
これに応えるのはアレノのブルターニュ産ムール貝の冷製ムクラードソース。
紫蘇風味のヴィネグレットとトマトにムール貝のアイスクリームを添えて、旨みの余韻を深めた。
続いてはオルダーニのスペシャリテであるリゾット。
イカ墨のソースをイカ墨のゼリーで覆い隠した一皿である。
対するアレノは、舌平目のブレゼで応える。
炙ったザル貝と生の蛤を添え、ブラッドオレンジのピールを散らしたソースに、グリーンピースの彩りを。
地中海を臨むモナコらしい華やかさと繊細さが凝縮されていた。
二人のシェフは客席を回り、常連客と挨拶を交わすひとときも。
「3週間前にダヴィデの店で食事をしたが、三つ星の扉はすぐそこにあると感じた」とアレノは語ってくれた。
華麗なるエトワール=星の共演は、地中海の夜景を前に大成功を収めた。(本特集敬称略)