
年間寄付金額は1.5億米ドル 45,000人の篤志家に愛される〈メトロポリタン歌劇場〉
1883年、新興の産業資本家たちにより誕生した世界最大規模のオペラ・ハウス。
その運営費の半分は、今日も寄付金で賄われている。
Ⓒ Marty Sohl / Met Opera
ニューヨークの舞台芸術の頂点に君臨するメトロポリタン歌劇場(通称MET)。
アップタウンのリンカーン・センター内に構える壮麗なオペラ・ハウスだ。
4,000席を擁する世界最大規模の劇場として、9月から5月までの8ヶ月にわたり18の演目、 200を超える公演を催し(2024-25年シーズン)聴衆を魅了している。
古典の大作から現代オペラまで多彩なレパートリーを擁し、世界屈指の歌手たちがその歌声を響かせる。
また、最新の映像技術やテクノロジーを駆使し、斬新な演出や舞台美術でオペラの新時代を切り開いている。
その創設は1883年。アメリカで急速な経済発展と産業革命が進んだ時代だ。
新興の産業資本家たちが台頭し、鉄道王のヴァンダービルド家、不動産王のアスター家、銀行家のモルガン家などが、新たな歌劇場の建設に尽力した。
創設当時から個人の篤志家が活動を支え、やがて世界的なオペラ・ハウスへと発展していった。
Ⓒ Karen Almond / Met Opera
現在もこうしたパトロネージュの精神は脈々と受け継がれ、年間3億米ドル(約450億円)という膨大な運営費の半分が寄付によって支えられている。
個人献金の仕組みは多岐に渡るが、大きく4つのカテゴリーに分類される。年間75ドルからの献金でギルドメンバーとなり、2,750ドル以上がパトロン、25,000ドル以上がメジャー・ギフト、さらに500,000ドル以上がカウンセルと呼ばれる最高位の支援者となる。
献金の規模に応じて様々な特典が設けられ、優先的なチケット購入やバックステージ・ツアーへの招待、さらには著名な歌手や指揮者とのプライベート・ディナーなど、特別な体験が提供される。
現在、METを支える篤志家の総数は45,000人。これらの支援者との交流を統括するディベロップメント・ディレクターのマット・バード氏は次のように語る。
「篤志家の皆様が寄付をされるのは、オペラを心より愛しているからに他なりません。そしてニューヨークが芸術の世界的中心地であり続けることを願っています。献金を通じて、名作の保存、新作の創造、そして次世代へと受け継がれる芸術文化の継承を支えて下さっています」
オペラという芸術を未来へと紡ぐ壮麗な営み。
篤志家たちの熱い思いが幾重にも響き渡っている。