
世界のトロピカル・リゾート その原点を創生した建築家 ジェフリー・バワの世界
スリランカとは「光り輝く島」を指す。
インド洋に浮かぶ自然豊かな島だ。
稀有な歴史遺産、セイロンティーの高原、トロピカルリゾートの原点。
北海道ほどのこの南の国には、溢れるばかりの感動が待っていた。
今日、世界にあるトロピカル・リゾートという建築様式を考案したのがスリランカの建築家、ジェフリー・バワだ。
自然と一体化したスタイル、その独創的な建築遺産を巡った。
今日あるトロピカル・ラグジュアリー・リゾートの火付け役は、アマンリゾーツの創設者エイドリアン・ゼッカーだが、そのゼッカー自身、多大な影響を受けたと公言するのが、建築家ジェフリー・バワとその作品だ。
バワは西洋建築とも、アジアの伝統家屋とも異なる、独創的なスタイルを打ち立てた。
一言で言うなら、西洋建築は外部と内部を隔絶させて身を守るものだが、バワは室内の人工空間と室外の自然に連続性を持たせた。
自然の中にアンティークを配し、景観が美しい場所にはそれを眺めるための椅子を置いた。
バワの建築遺産を知るため、まず向かったのは、第一作目ながら改築を繰り返し、いわば「生ける建築」として残される本人の別荘〈ルヌガンガ〉である。
バワは1919年、コロンボの裕福な家に生まれた。
シンハラ人とヨーロッパ人の血を引いている。
英国ケンブリッジ大学に学び、弁護士として歩むが、イタリアへの旅路で空間の美しさに開眼し、スリランカに帰国。
広大なゴム園を購入して〈ルヌガンガ〉を計画した。
その後、改めて建築を学ぶため英国へ留学。
スリランカで建築家として再出発したのは38歳だった。
〈ルヌガンガ〉は週末の別荘であり、本人にとって建築の実験室でもあった。
左写真は古い納屋を移築改装したアンティークのギャラリー。
近くには空中楼閣とも呼べるグラスルームもある。
オープンエアのダイニングにはバワの指定席があり、座るとプルメリアの木の向こうに男性彫刻が見えるよう計算されている。
〈ルヌガンガ〉は今日、ホテルとしても運営する。
バワはウィークデイには、ロールスロイスが眠るコロンボの自宅〈ナンバー11〉で生活していた。
同施設も見学ツアーが催されている。
さらに建築作品はホテルに留まらず、寺院やスリランカの国会議事堂などにも広がっており、特異な才能を国の各地に残している。