古今東西、至極の美術品と 宿泊する贅沢『ART MON ZEN KYOTO』

古今東西、至極の美術品と 宿泊する贅沢『ART MON ZEN KYOTO』

ここには目の届く範囲、手の届くところに歴史的な美術品や骨董品が置かれている。

だが、美術館ではない。

「アートをもっと身近に感じてほしい」という願いと共に生まれた驚愕のアートホテル、<ARTMON ZEN KYOTO>だ。

この地に訪れると、まず「天外」という場所へ通される。

そこは御簾に囲まれ、床より一段あがったところにある。

眼の前に広がる畳敷きの卓子。

それにあわせて設えた椅子は卓子の畳で正座するときの目線に合わせたものであり、そこに座れば茶室のようでいてそれとも違う特別な空間にいるように感じられる。

実際、この卓子はすべて畳敷きにすることで、ときには茶室として、ときには能舞台になるなど、さまざまな用途として使われるとのことだが、どのような形であっても「天外」がもつ精神性を昇華できるに違いないだろう。

そこで点てられるお茶は、実際にこのホテル内で挽かれたものであり、お茶菓子も専属パティシエのオリジナル。

京都ならではのもてなしの心と雰囲気に心が洗われ、余分なものが削ぎ落とされていく気分になる。

ふと顔を上げるだけでもさまざまな美術品が目に入る。

天井にはオールドバカラのシャンデリア、その下には現代美術や中国 明時代の美術品などが大胆に、しかしバランスよく備えられている。

とりわけ、掛け軸は取材時にかかっていたのは江戸時代のものであったが、季節だけでなくイベントや来賓客に合わせて変わることもあるそうだ。

ほかにも目に入る美術品を「あれはなんだろうか」と想像し、実際に近くに寄って体験できる好奇心と自身の知見が蓄えられていくことが楽しい。

重ねて言うが、ここは美術館ではない。

ホテルなのだ。

だが、これはこれから始まるめくるめくアートの色相のはじまりにすぎない。

ART MON ZEN KYOTOの各客室には、その部屋に合った美術品がガラス張りの展示ケースでディスプレイされている。

それも、ただ置かれるのではなく、解説文と専用のスポットライトが用意されており、まさに美術館に宿泊していると言っていい。

そのこだわりはとてつもなく、部屋のどこにいても美術品が眺められるように設計されている。

それはお風呂に入っていたとしても、だ。

では客室そのものはどうか? すべての部屋にある家具は、このホテルのためだけに作られたオリジナル。

それもソファにはオランダ製<カルッチ・ディ・キファソ>のファブリックを使用し、カウンターも榧の木やウォルナットを使ったワンオフの“特別仕様”。

まさに細かな部分までその哲学が行き届いている“神は細部に宿る”を体現するホテルなのだと畏敬の念すら感じてしまう。

客室そのものが美術品と同じくオンリーワンのクオリティであり、それを裏付けるお話を担当者の方からお聞きした。

このホテルを建てる際には「作りたいものを作る」ために「予算を決めなかった」のだという。

そして、究極はこのホテルそのものが、じつは数寄屋造りを建てていた棟梁が初めて手掛けた洋建築なのだという。

よく見ると壁と天井の「漆喰」、床には「なぐり」など、あらゆるところに数寄屋建築の技法が凝らされているのがわかる。

古今東西和と洋、さまざまな美術品が調和する巨大な海に迷い込み、その波に身を任せるような気持ちよさ。

世界中を探しても、こんなホテルはどこにもない。

ART MON ZEN KYOTO

住所:
京都市東山区古門前通大和大路東入元町 391 番地
電話番号:
075-551-0009

photographs / Shinichi Tomikawa